アメリカ西部(国立公園)、山歩き事情


アメリカの国立公園を歩こうと思えば、通常交通手段は車が一番便利なので、個人で行くには自ずとレンタカーになります。
トレイルのスタート地点(トレイル・ヘッド)への車道はどこも良く整備されていてスムースに移動できます。
山岳地帯に入ってもドライブ・ウェイが整備されていて、歩かなくとも凡その景色を堪能できるようになっていますが、ケーブルカーやロープウェー(ゴンドラやリフト)は今回訪れた所には何処にもありませんでした。国立公園の制約があるのでしょうか。
グランド・ティトンとイエローストーンの中間にある
ヘッドウォーターズ・ロッジ
トレイルは沢山ありますが、全般にショート・ウォークが多く、長いコースはテントを担いだバックカントリーなどの長距離コースとなり、丁度1日かけて歩くようなコースは各地ともそれほど多いようには思えませんでした。
今回は、全てハーフ・デーとフル・デーの日帰りハイキングのみだったので、その範囲内での情報をまとめてみました。



(1)出発前の日本

@地球の歩き方「アメリカの国立公園」を読む
先ず、アメリカ西部のハイキング(山歩き)を知るには、この旅行案内を読むのが手っ取り早い。
アメリカ入国、国立公園の紹介、アクセス、宿泊・レストラン、主なハイキングコース等々を幅広く知ることができ、行き先の絞り込みや大まかなスケジュールを立てるのに役立つと思う。

Aウェブサイトで調べる
*国立公園のオフィシャル・サイトの国立公園サービス(National Parks Service)を先ず見ることをお勧めします。by Activity→ Hiking →国立公園、と順番に選択して行くと、数々のハイキング・トレイル情報を得ることができます。公園によっては簡略ですがハイキング・マップも見ることができます。
*もう1つ、非公式ながら、やはり国立公園の情報を得るサイトとしては、アメリカ国立公園リンクス(National Parks Links)があります。アメリカの全国立公園が掲載されていて、アクセス、地図(全体図)、宿泊、ハイキング・トレイルのリスト(距離・時間・難易度)等を知ることができます。
*上記の本とウェブサイトで計画のイメージができれば、あとは個々のトレイルをウェブ検索して詳細を調べれば、かなりの詳しい情報が得られ、計画を完成することができると思います。

B道路地図を手に入れる

    アメリカの州別道路地図をJAFの支店に電話で申し込んで手に入れることができます。
1冊500円で支店に取りに行くか、郵送で送付してもらえます(郵送料有料)。詳しくはWebサイトのJAF・AAAアメリカ州別地図を見てください
 JAFで手に入るアメリカ州別道路地図


Cできれば公園内の宿泊がお勧め(予約は早く)
アメリカの多くの国立公園やモニュメント・バレーなどの公園は町から離れているので、公園内の宿泊施設に泊まるのが便利です。しかし施設数が限られている上に人気があるので、早く予約をしないと満室になってしまうようです。7月の旅行で3月に各地の予約を入れましたが、立地の良い所は殆どがフル・ブッキングになっていました。
グランド・キャニオンの谷底にあるファントム・ランチ(Phantom Ranch)という小屋などは1年前からの予約が必要との話もあります。

D航空券・レンタカー・保険
*航空券
できるだけ安い格安航空券を手に入れる努力を惜しまないことが大切。ネットで探すのが手っ取り早いしネット申し込みも簡便。
現在はeチケットになっていて航空券を持ち歩く必要が無い。但し日本では自動チェックイン機でなくともチェックインカウンターで搭乗券を発行してもらえるが、アメリカでは自動チェックイン機でしか搭乗券を入手できず、初めての経験でおろおろした。日本発の時に自動チェックイン機で発券をしてみたり、予め使い方の説明をネットで見ておくべきでだったと思っています。
*レンタカー
日本で予約しておいた方が安くつくし、現地での手続きの時間を少なくできる。
カー・ナビは絶対に必要です。カー・ナビ無しで、もし道を間違えた場合、時間のロスをするし、1ブロック、2ブロック間違えただけで現在地がどこか分からなくなり混乱してしまいます。レンタカーで借りるカ―・ナビは多言語になっていて日本語を選べるようになっています(係員が選択してくれた)。特におかしな表現もなく有効に使えた。
*海外旅行保険
クレジット:カードに付いている海外旅行保険でも十分なのですが、救援費用の保険金額が少ないという一点で、別に旅行日数に応じて毎回海外旅行保険に加入しています。通常ネット申し込みの方が契約料が安くなりますが、69歳以下とか70歳以下とかの年齢制限があるようです。年齢を超える場合は契約料が高くなりますが紙の申込み用紙を送ることで可能になるようです。
これ等の保険はピッケルやアイゼンなどの特殊登坂用具を使わない登山であれば保険の対象になりますので、当ホームページで紹介している山歩きのほぼ100%は大丈夫ということになります(幸い一度もお世話にはなっておりませんが)。

E現金(ドル)
アメリカではクレジット・カードの社会で、現金はほんの少し持って行けば良い、ということを信じて行ったのが間違いでした。
グランド・キャニオンを後にして、リトル・コロラド川渓谷(Little Colorado River Goage)という景色に変化のある道路沿いのナバホ族の土産露店で、家内がターコイズのネックレスを買った。支払いは現金のみ。たちまち手持ちのドルが殆ど無くなった。
次の公園はモニュメントバレー。砂漠地帯を延々と走り着いた所も砂漠。ATMで現金を引き出せる所は何処も見当たらない。
モニュメントバレーではジープのツアーに申し込むつもりだったが、これもナバホ族が運営していて現金でないとダメ。しかたがないのでツアーは諦めてレンタカーで砂地の悪路の周回道路に乗り入れ、ひやひやもので走った。
その後、現金を手にしたのは、アーチーズ国立公園を過ぎてロッキー・マウンテン国立公園の麓の町・エステスパークのATMでした。
アメリカにも現金でないとダメ、という所がありますので、程々は持って行った方が安心です。


(2)アメリカに着いて

@アメリカの公園は有料

   アメリカの公園に入るには入園料を払う必要があります。公園の入口近くの道路にゲートがあってここで入園料を払います。入園料は公園によって違いがありますが、アメリカ・ザ・ビューティフル・パス(America Beautiful Pass)という年間パスを購入すれば国立(National)と名がついた公園ならどこでもこのパスで自由に出入りができます。詳しくはAmerica the Beautiful のサイトを見てください。
このパスの料金は$80 で国立公園(National Park)の他に国立自然保護公園(National Conservation Park)や国立レクレーション・エリア( National Recreation Area)などの公園でも有効で、一度に5〜6ヶ所を訪れるなら年間パスを購入した方が安くつくと思います。
公園には他に州立公園(State Park)がありますが、ここは国立とは別になっていて入園料が別に払う必要があります。
 アメリカ・ザ・ビューティフル・パス(年間パス)
左は車に掛ける、右は証明カード


A公園入口で公園案内と地図がもらえる

 公園には必ず立派なインフォメーション・センター(ビジター・センター)があり、問い合わせには親切に教えてくれるし各種パンフレットが用意されているが、公園入口の料金支払いゲートでは、必ずその公園の地図や案内書や最新の情報が載っている新聞を渡してくれるので、観光だけなら通常はここでもらう資料で十分公園の知識を得ることができる。
 ロッキー・マウンテン国立公園の
インフォメーション・センターの1つ

 左の写真は、各国立公園のゲートでもらったガイド冊子です。
全て同じ形式で作成されていて、一枚の紙が折りたたんであり、開けると主な見所と地図と地質と動植物などの説明がぎっしりと記載されている。
編集は全てNational Park Service US.Depatment of the Interiorとなっていた。
何時も海外・特にヨーロッパ系の国に行くたびに感じることだが、規格統一思考の素晴らしさには感心し驚かされます。
 各国立公園のガイド冊子

このような共通の仕様でつくられたガイド冊子の他に、下の写真にあるような各公園独自のガイド冊子や新聞等を公園ゲートで受け取ることができます。
 イエローストーン国立公園の
ガイド冊子
グランド・キャニオン国立公園の
日本語のガイド新聞



(3)車での長距離移動時の飲み物や食品の冷却
車での長距離の移動では飲料水が欠かせません。特に夏季の西部の移動は乾燥していて温度も高いのでジュースなどを積み込んでおく必要がありますが、冷たい温度に保つ工夫がいります。車をちょっと止めておいただけで、飲み物はお湯になり食べ物は熱を帯びた状態になります。本格的なクーラー・ボックスがあれば一番良いですが、日本から持って行くのは大変ですので折りたためる簡単な簡易型のクーラー・バックがあればそれで十分に役目を果たせます。
アメリカの宿泊施設には必ず無料の製氷機があるので、朝出かける前に大きめのジブロック2〜3個にガラガラガラ―と氷を詰めてクーラー・バックに入れておけば、1日程度は十分もって何時も冷たい飲み物が飲め、食べ物も変質せずにおいしく食べられます。


(4)トレイル入口と駐車場

   アメリカは車社会ですから、通常、トレイルの入口(Trail Entrance)まで車で走れる綺麗な道がついているし、駐車場も完備され、入口には説明書きや地図が書かれた立派な表示板が立っているので、事前に調べておけば、出発点が見つからないということは起こらないと思います。
ヨーロッパ系の人は朝早くから歩き出す人は少ないようなので、早朝出発すれば駐車で苦労することは無いと思います。遅い出発ですと駐車場が満タンで苦労することになるので注意が必要です。
 ロッキー・マウンテン国立公園の
トレイル入口と掲示板と駐車スペース


(5)ハイキング地図とトレイル

@ハイキング地図
先に述べた国立公園のオフィシャル・サイトに簡略地図が掲載されていれば、その地図をプリントして持って行っても良いし、インフォメーション・センターで尋ねれば無料のものや有料のものを示してもらえます。
下の地図はグランド・テートンで入手したハイキング地図の1つで、トレイル入口に立てられた小さなボックスに置かれていて、たしか¢50のお金を入れて自分で取ってもらうシステムになっていました。

Aトレイル
今回歩いたような日帰りや半日で歩けるトレイルは良く整備されていて、危険を感じるほどの所はなかったように思う。標識はほぼ統一されたしっかりしたものが立てられているが、下の写真にあるようにあまり大きくはなく色も目立たないので、見過ごさないように注意したい。また分岐以外には通常標識は無くペイントなどの矢印なども無かったように思う。トレイルを見失う恐れのある所などにはケルンが置かれていて、これを頼りに辿ることになります。トレイルと言えども自然を守る意思が伝わってきます。
   
グランド・テートン国立公園の
カスケード・キャニオン、ハイキング・マップ 
カスケード・キャニオンのトレイル標識


(6)携行食品と水
@携行食
通常、ちょっとした町にはスーパーマーケットがあり、田舎の町には小さな店が、更に何にも無い所にはガソリンスタンドに食料品が売っていて、必ずどこかでハイキングの携行食品や翌日の朝食を仕入れることができます。
私の場合、携行食品は何処に行っても大体同じものになってしまい、飴やチョコレートやマンゴー等のドライフルーツにリンゴ等の果物、それに日本から持って行った甘納豆等でした。
   アメリカでは特にトレイル・ミックス(Trail Mix)と言う色々なドライフルーツやナッツ類を混ぜて袋に入ったものが売られていて、おいしく値段も安く高エネルギーで日持ちも良いので、携行食としては最適です。
このトレイル・ミックスは、カナダ・ロッキーやニュージーランドでも同じくポピュラーな食べ物でした。
 
 (カタログより転載)

グランド・テートン国立公園では、何故かどこにも果物が見つからず、公園の玄関口のジャクソン・ホー
ル(Jacson Hole)の町まで行ったが、ここでも何処にも売ってなく、隣の国立公園のイエローストーンに行って初めて見つかった。なかなか欲しいものを探して買うのは難しいものです。

A飲み水
 何でも大きいのがアメリカですが、1ガロン入りのミネラル・ウォーターが売られているので、安くて便利です。1ガロンは4リッターを少し切るくらいの量ですが、たしか$2程度で買えたように記憶しています。
ハイキングには、この水を別の容器に小分けにして、日本から持って行ったスポーツ・ドリンクの粉末を入れたり、アメリカでは電解質飲料粉末(Electrolyte Beverage Powder)と言う名で売られているので、これを買って入れて使いました。

高温乾燥のアメリカ国立公園、特にグランド・キャニオンやラスベガス近郊のハイキングでは、1日歩くハイキングなら1人4リッターの水を持って行くべし、となっています。他の高地でのハイキングでも意外と暑かったので、くれぐれも水は多めに、しかもただの水ではなく糖分や汗で失われた塩分や電解質を補給できるスポーツ飲料(粉末を溶かしたりして)を必ず持って行きましょう。
 売られている1ガロン入りの水
(カタログより転載)


(7)蚊や動物

@蚊

蚊が寄ってこない防虫スプレーと、蚊にさされた時のかゆみどめ薬を持って行ったが、苦になるほどの蚊の攻撃には今回遭遇しなかった。乾燥地が多かったせいかもしらない。蚊の大群にひどい目にあったという記事もありましたので、用意しておくに越したことは無いと思う。

A動物
熊は車の中から見ただけだったし、バッファローは何度も見たが鉢合せしてびっくりということも無かったので、危険を感じることはありませんでした。ただ、ハイキングをするということは、熊やバッファローの国に人間が入り込むと言うことですので、絶えず注意して、もし出会っても驚かすことのないように心がけたいものです。
日本で良く目にし耳にする熊よけの鈴ですが、カナダ・ロッキーと同様、鈴を鳴らしながら歩いている人に出会ったことは一度もありませんでした。「鈴の音は効果が無いばかりか、熊が興味を示して寄って来る」、という嘘みたいな話は本当なのかもしれない、と今では思っています。
 


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